眠れぬ王子の恋する場所


「豊満な身体がいいなら、デリヘルとかで胸の大きい子でも呼べばいいじゃないですか。呼んであげましょうか。ただし、電話を代理でかける代金きっちり頂きますけど」

わざとギスギスした声で言うと、久遠さんは「金で女買うほど飢えてない」とそっけなく言い、持っていたピースをパズルにはめる。

パチン、とした音が神経を逆撫でし、眉を吊り上げていたけれど……パチ、パチ、と静かに繰り返される音を聞いているうちに、不思議と怒りが冷めていった。

考えてみれば、話し始めてからずっとこんな感じだけど。
なんでこの人は、常にケンカ腰みたいな話し方しかできないんだろう。

あんな顔色なんだから体調はよくないんだろう。
それなのにわざわざ突っかかる言い方なんてしていたら疲れそうなものなのに……と不思議になる。

壁というか、そういうものをわざと言葉で作っているように感じながら……何気なしに部屋を見渡す。

ホテルだからっていうのもあるとしても、私物がまるで見当たらない。
元々置いてある家具以外なく、久遠さんの物と考えると、唯一パズルがあるくらいだった。

ベッドやソファから持ってきたのか、いくつものクッションが久遠さんの周りに集まっていて、筋斗雲みたいになっていた。

レースのカーテン越しに眩しい明かりが入り込み、部屋に浮かぶ埃をキラキラと浮かび上がらせている。

大きな窓に、生活感のない部屋。そして、響く音はパズルの音のみ。

独特な空間に感じた。

こんななか、ひとりでずっとパズルをしていたんだろうか……と考えたら、なんだか可哀想になってしまった。

こんな天気のいい日に、たったひとりでパズルをパチパチしてるって……と不憫に思えてきてしまう。


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