眠れぬ王子の恋する場所


「追い返すような人ならそうだって最初に言ってくださいよ。すごい苦戦しました」

ため息を落としながら言うと、『そんなん言ったらおまえ面倒くさがって行かねーだろ』と社長が笑う。

『で? 今はどこだ?』
「まだ久遠さんの部屋です」
『へぇ』

意外そうに驚く社長に「なんかパズルしてたら寝ちゃったんですけど」と告げると、もっと驚いたような声を出された。

『寝たって、久遠が?』
「はい。……そんな驚きますか? なんか見るからに顔色悪いし体調悪かったんじゃないですかね」

不調なら眠くなるのも当たり前だと思い言うと、社長は『そうじゃねぇよ』と話す。

『あいつ、不眠症だから。しかも中学の頃からだから相当年季が入ってる』

不眠症……って、夜、眠れないだとかそういう病気だ。

よく知らないけど、確か、精神的なものが原因とかじゃなかったっけ……と考えながら「でも、すやすや寝てますけど」と言いながら、こっそりと部屋を覗きに行く。

一応、物音に気を付けながら部屋に戻ると、久遠さんはさっきと同じ体勢のまま静かに寝息を立てていた。
眉間のシワもない。

『おまえがいるのに寝るとか、ここ最近よっぽど眠れてなかったのかもな。いくら不眠症って言ったって、限界がくれば寝るんだろうし。よく知らねーけど』

どうやら私と同じくらいの知識しか持たない社長に、「で、どうすればいいですか?」と聞きながら洗面所に戻る。

『どうせまとまった時間は寝れないだろうから、そのうち起きるだろ。あと三十分も待って起きなかったら帰っていい。久遠が選んだホテルならどうせオートロックだし』

どうせオートロックだしって……久遠さんってオートロックの部屋にしか泊まらないんだろうか。こだわりでもあるのかな。

そんな風に考えていると『俺もあと少ししたら大学生んとこに殴り込みに行かなきゃだし、これ以降の報告はいらないから』と言われうなづく。

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