眠れぬ王子の恋する場所
「ああ、大家さんからの依頼ですね。了解です」
『まぁ、電話は出られるから、なにかあったら連絡してこい』
「はい」
電話を切り、携帯を下ろして……何枚もあるバスタオルを一枚手に持つ。
そして、物音に気を付けながら部屋に戻った。
相変わらず同じ体勢で寝ている久遠さんを見て、床でなんか寝たら身体が痛そうだけど大丈夫だろうかと心配になる。
久遠さん、無駄な肉がなさそうだからダイレクトに骨が痛そう。
だからと言って、不眠症なら下手に起こさない方がいいんだろうし……まぁいいか、と片付ける。
持ってきたバスタオルを広げ、久遠さんの胸から下にそっとかけた。
いくら夏とはいえ、空調が効いているしそのまま寝るには寒そうだ。
夏場の効きすぎた空調ほど風邪に直結するものはないっていうのは、この時期の電車でじゅうぶんすぎるほど思い知っている。
無気力吉井さんもそれには同意していたから間違いない。
バスタオルはそこまで厚みはないけど、ないよりはマシははずだ。
寝室に入るのは気が引けるから仕方ない。
不眠症だってことだしバスタオルをかけたわずかな空気の動きで起きたりしたらどうしよう……という心配は無用だったらしい。
目を開けたときよりもあどけなさが残る寝顔は穏やかなままで安心する。
寝かしつけたばかりの赤ちゃんを眺めるお母さんって、こんな心境なんだろうか……と思いながら寝顔を眺めていて……そうだ、と携帯を操作する。
不眠症がどんなものなのかが知りたくて、ネットで検索して、とりあえず一番最初に出てきたサイトにアクセスする。