眠れぬ王子の恋する場所
「なに?」
面倒くさそうに聞かれ、「緑茶です」と答える。
「さっき、目の疲れについて調べてたらカテキンがいいって出てきたので。目が疲れてるから、そんな常に眉間にシワが寄っちゃうんですよ」
わずかにバツが悪そうに、お茶に視線を移した久遠さんに続ける。
「それに、久遠さん、顔色悪いですし。温かい飲み物は、身体にもいいですし、身体が温かくなれば眠りにもつきやすいですから」
〝眠り〟という言葉に反応したのか、私を見た久遠さんを見つめ返した。
「パズルばっかりしてないでちゃんと休んだ方がいいですよ。仕事に響いたらマズいでしょ」
信じられないけれど、御曹司らしいし。
久遠財閥の御曹司なんていったら、仕事だって忙しそう……なイメージがある。
実際、大企業の社長とか御曹司が日々、どういう仕事をしているのかは想像もつかないけれど、とりあえず人付き合いは大変そうだと、ドラマだとかを思い出し考える。
うちの社長みたいに適当にはやってられないんだろうってことはわかった。
「さっき調べたら、このホテル、ルームサービスもやたら充実してるみたいですから、ちゃんと食べてくださいね。
大抵の人は、お腹がいっぱいになると眠気に襲われる仕組みですし、まずはきちんとした食生活から始めてみたらどうですか。
あと、日中は外に出て日光を浴びるのもいいとか書いてありましたし」
そう告げながら、こういう対応することにデジャブ感を覚える。
なんでだろう、と考えて、すぐに吉井さんの顔が浮かんで苦笑いがもれた。
吉井さんも生活力がないから、つい、こういう人を見るとお節介を焼く体質になってしまっているのかもしれない。
吉井さんはまだしも、久遠さんなんてもう二十九歳だっていうのに……うっとうしかったかな。