エリート御曹司が過保護すぎるんです。
(――って、私ったら、なに観察してるのよ!)

 やましい気持ちを振り払うように、ぎゅっと目をつぶる。
 すると二階堂さんは、私の頭から顎を下ろし、耳もとに唇を寄せた。

「和宮さんの髪、ものすごくいい匂いですね。なにか特別なシャンプーでも使っているんですか?」
「ひゃっ!」

 すぐそばでささやかれ、へなへなと崩れ落ちそうになる。
 すると二階堂さんが体を支えてくれ、さらに密着度が増した。

「大丈夫?」
「い、いや、その、大丈夫ですっ! それから、私が使ってるのなんて、普通のドラッグストアで買ったシャンプーですっ! に、二階堂さんこそ、いい匂いがしますねっ!」

 私はいったい何を口走っているのだ?
 いい匂いがするなんて、変な女だと思われたのではないか。

 動揺してカミまくりの自分が情けなく、この場から逃げ出したい気持ちでいっぱいになる。

「一応外回りの営業ですからね。汗かきなんで、この時期は気を遣うんですよ」

 その瞬間、今朝見た光景がフラッシュバックした。

 赤いマウンテンバイクから降りた彼の髪の毛から、ぽたりと落ちる、汗のしずく。
 首筋を水滴が伝い、とてもきれいで艶っぽかった。
 Tシャツが体にピタリと貼りついて、がっしりした上半身のラインを浮き上がらせていて……。

 ますます脳内が暴走してきて、自分の周りだけ温度が3℃くらい上がったような気がした。
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