エリート御曹司が過保護すぎるんです。
「桃ちゃん、お待たせ」

 買い物を済ませた紫音が体育館にやってきた。
 パイプ椅子を持ってきてどかりと座る。
 そして体育館のなかを見渡した。

 私は膝の上に置いてあった二階堂さんのドリンクボトルを、さりげなく椅子の隣に下ろした。

 ――私は、ずるい子だ。

「あー、係長、動きがやっぱり鈍いわ。仕方がないか、あの腹じゃ」

 豪快に笑う紫音の横で、私は罪悪感で溺れそうだった。


「紫音ちゃん、バレー部って意外と人数多いんだね。全然知らなかった」

 場を取り繕うように関係ない話題を振る。

「うちの支社のメンバーは、私を入れて7人。今回はほかの支社と合同の合宿なのよ」
「そうなんだ。どうりで見たことのない人も多いと思ったんだ」

 紫音は、「あの人は本社の企画課で、あの人は横浜の総務で……」と指差しながら教えてくれた。

「あの人、いいカラダしてるよね~。桃ちゃんもそう思わない?」
「えっと……服着てるからわかんない」
「ぶはっ! 淳司の言うとおりだわー。桃ちゃんおもしろい」

 涙目になって笑いながら、紫音は私の頭を撫でた。


 紫音が今日のスケジュールを説明してくれる。
 午後からは支社対抗の親善試合があるらしい。

「うちの支社はほかと比べて普段から練習しているから、いい線いくと思うんだ。でも手ごわいのは、やっぱり本社かな」
「じゃ、がんばって応援しなきゃね」
「そうだね。桃ちゃんが応援してあげると、喜ぶヤツが約1名いるからさ」

 紫音はそう言うと、意味深に笑った。
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