エリート御曹司が過保護すぎるんです。
 事務所の鍵を開けて、自分のデスクに荷物を置く。
 そして、フロア内にこもった空気を入れ替えるために、すべての窓を開け放った。

 社員が出社するころにはエアコンのスイッチをオンにするけれど、まだ誰も来ていないこの時間帯は、できるだけ自然の風を感じていたい。



 ここ数年、日本全国で『電力不足』『節電』というキーワードがニュースや紙面をにぎわせている。
 このビルでも、照明を弱くしたり、時間によってエレベーターの稼働台数を減らしたりして、せっせと節電に励んでいた。

 わが社でも、クールビズが始まった。
 といっても、サマータイムと称して早い時間に出社するのは、事務と総務課の一部だけである。

 ほかの社員が出社後すぐに仕事が始められるよう、余計な雑務を片付けておくのが事務の仕事なのだ。
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