奏でるものは~第3部~
「話がしたい」
「……今は無理。しばらく時間をちょうだい」
「………今、ここでもいいから、話がしたい」
食い下がる優さんの顔をチラッと見て目線をずらす。
「……無理。また今度にして」
「体調悪いのか?大丈夫か?」
思わず睨んでしまう。
「今は放っといて……また今度にして」
「いつ?」
「…………いつ、か、わからない」
「話したくないのか?」
不安そうに聞いてくる。
「そうじゃなくて、冷静になれない」
「……冷静にならなくていいから。
ちゃんと聞いてほしいし、お前の気持ちが聞きたい」
「とりあえず……今日は無理」
顔を見ずに言った。
「今日は諦めるから……ラインだけでも見てほしい、頼むから…」
「わかった、じゃ」
自転車をこぎ出した。