奏でるものは~第4部 最終章~
土曜日。
10時になる前に駅のロータリーについた。
3年ほど前に駅前にバスターミナルが出来、一方通行のロータリーになっている。
鞄のポケットの電話がなり、出ると優さんだった。
「はい」
『おはよう、右の方みて、黒の車』
あ、いた。
「すぐ行くわ」
膝下の丈の黒地に白の花柄のスカートが、曇天の湿気を少し帯びた風をフワリと頬張るように一瞬開きかけて、閉じる。
足を早めて優さんの方に近づく。
車から出てきて、微笑む優さん。
黒のポロシャツの胸元から見える銀のネックレスが色気を醸し出している。
やっぱり、ドキリとする。