君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「王子元気ないね」

ほら、心配されてるよ。

ん?
心配する男の子の右手には何かが握られている。

……うわ。

男の子の手の中のものを見て、私はその場をそっと離れる。

カナトはまだ気づいてない。

「王子にこれあげるよ。
はい、元気出して」

そう言って、男の子は右手に持っていたバッタを近づけた。

「う…っわ!」

かなり大きな声をあげると、すごい速さでシンの背中に隠れた。

まさか、カナトも…。

「バッタ嫌いなの?」

男の子は不思議そうに、シンの後ろへとカナトを追いかける。

「ちょ、ちょっと。
それ以上、虫を近づけないでくれ!

その関節とか、苦手なんだよ…」

すごく怯えてる。
必死なのが微笑ましく思えてくる。

私があの立場だったらもっとギャーギャー言ってるんだろうけど。
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