君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
そういえば、ここに来てから孤独感に襲われたことは一度もない。
常に誰かがいてくれた。

今もこうやって、シンが付き合ってくれている。

「私のことばっかり心配してないで、自分の身も大切にしてよ?

シンがいてくれないと、やっぱり落ち着かないから」

「俺の心配ですか?」

意外そうな声。
意外そうな顔。
いつもひょうひょうとしてるシンが珍しい。

そんなに変なことを言ったかな?

「そうだよ。
私もカナトも、シンを大事に思ってるから。

よし。
そろそろ城に戻ろうか。
歌の準備をしなきゃ」

服をはたいて戻ろうとすると、木ノ上からシンが目の前に降ってきた。

び、びっくりした。

「シン?」

呼び掛けても何も言わず、難しい顔をしたまま。
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