君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
いつものふざけた雰囲気は感じられなくて、どことなく重い空気感が漂う。

「……」

「え?」

何か言ったような気がした。
けど、風のせいではっきりとはわからなかった。

「いえ、なんでも。

準備があるんでしょ。行きますよ」

聞き返すけど、誤魔化された。
本当に何も言ってなかったのかな?

でもそれを問い直してる時間はない。

「うん。
そうだね」

城の方へと進む。

数時間後には歌を披露してるって考えたら緊張してきた。

「俺も聞きたかったー。

こうなったら夕食会に忍びこんで…」

「そんなことしたらカナトに叱られるよ」

「それはいつものことです」

「たしかに」

思わず笑っちゃう。
なんか、気持ちが軽くなったかも。

シンは人の気持ちを汲み取るのが上手いな。
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