100点テストの祈り鶴
気づけば教室に誰もいなくなっていて、二人きり。
いつの間になんて気にする余裕もなく、恥ずかしいのにその視線から逃れる事もできない。
「あーー……駄目だね。また臆病な事言っちゃった」
照れくさいのか、彼は私から視線を外して俯く。
私も何か答えなければと、言葉を探すも見つからない。
「あ、う……」
気持ちだけが焦り、言葉にならない音だけを零す。
そんな私を察したのか、代わりに彼が言葉を形成して私に投げかけてきた。
「花村さんって、話すのもあんまり得意じゃなかったよね」
と、言われて思いだすのは二年生に上がった時の事。
「隣の席になっても俺と話す事がない処かクラスの子と話す事もなくてさ」
彼も私のそんな姿をよく知っているらしい。私にだって痛いほどに身に覚えがある。
「いっつも話掛けようとしてるの目に見えて分かるのに、どうにもしてあげれないのがもどかしくてさ」
時折睦月君は、「次の授業なんだっけ?」とか「課題やってきた?」とか話しかけてくれていたのに、私は単語を返すだけで精一杯だったのだ。