冷血部長のとろ甘な愛情
短い挨拶に課長は目を見張ったが、部長本人は頷くだけ。長く語るつもりはないらしい。

それならば、早く朝礼を終わりにして、座らせて欲しい。

三十路を過ぎると前日の疲れが取れにくくなる。昨日、アウトレットモールで歩きすぎたなと反省。でも、いろいろ買えたからいいんだ。


「神原さん、そのスカート新しいですよね? 素敵ですね」

「うん、ありがとう」


昨日購入したばかりのスカートをこそっと五年後輩である宮田奈由(みやたなゆ)ちゃんに言われ、こそっと返事をする。

定価の60%オフでゲットできた戦利品は春らしい小花柄が気に入っていて、オフィスでも華やかすぎないで着れると思い、早速着てきた。

それを褒められて悪い気はしない。それどころか下がっていたテンションが上向きになった感じだ。


「じゃあ、これで解散。今週もよろしくお願いします!」


一週間の大まかな予定を課長が話して、朝礼は終わる。あちこちから覇気のない「よろしくお願いしまーす」が聞こえた。

私に至っては気分が上向きになっていても声を出すのが、面倒で頭だけ下げた。でも、まあこれは今日だけでなくていつものこと。


「ちょっと待て」
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