冷血部長のとろ甘な愛情
散り散りに自分のデスクに戻ろうとするみんなの動きを止めたのは部長の低い声。何事かと誰もが動きをピタッと止めた。私も彼に背を向けていたが、振り返った。

なにか気に障ることでも?


「平沢部長、なんでしょう?」


見るからに部長よりも課長のほうが年上ではあるが、部長の威圧感が半端なく、課長がビクビクしている。


「佐藤課長。あなた、これでいいんですか?」

「な、なにがですか?」


じろりと睨まれ、課長は体を縮み込ませた。かっこいいけど、あの目つきはやばい。あれは怒らせるとまずい人だ。

誰しもが言葉をなくして、何を言うのかと注目していた。


「挨拶は基本でしょ? そうじゃないですか、佐藤課長?」

「左様でございます」

「だったら、なんであんなだらけた挨拶をそのままにするんですか? おい、もう一度集まれ」


集合がかかり、みんな背筋を伸ばして、部長と課長の周りに集まった。


「やり直し。ほら、佐藤課長もう一度やってください」

「は、はい! じゃあ、みんなちゃんと挨拶して。よろしくお願いします!」
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