冷血部長のとろ甘な愛情
「悪い、それは勘弁して。勝手にやってすみませんでした」


頭を下げてはいるが、悪びれた様子が全然感じられない。形式的な謝罪なんてしてもらわなくても結構だ。

私は何も答えないで再び家に向かって歩き出した。もう付いて来ないだろう。

しかし、期待は裏切られる。


「待てよ。お詫びに送らせて」

「一人で帰れるから大丈夫です」


なんでまだ諦めずに付いてくるのだか。送ってもらう方が危険だ。二回も勝手にキスする男なんて信用出来ない。


「なんで頑なに拒否する?」

「信用できないし、あなたみたいな人が嫌いだからです」

「ああ、だったら気にしなくていい。俺も君みたいの嫌いだから」

「はあ? じゃあ尚更送ってもらわなくて結構です」


本当に意味不明。

嫌いなら送らなくていいだろうに。

足に力を入れて歩く。ヒールの音が静かな夜に響くがそんなことを気にしてはいられない。

ものすごく腹が立つ。

何なの、あの男。最低! 大嫌い!

角を曲がるとき、後ろを見ると遠くに最低男の後ろ姿が見えた。


「ただいまー」

「おかえり」
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