冷血部長のとろ甘な愛情
その塾は今もまだ同じ場所にある。家が近いなら同じ塾に通っていたとしても不思議なことではない。年齢が違ったから顔を合わせたことはなかっただろうけど。


「でもね、あの頃の晴生は今のところに住んでいたんじゃないんだよね。な?」

「そう。でも、よく行ってた」

「まあ、俺もよく行ってたけどね」

「よく話が分からないんですけど」


住んではいなくてよく行くとは謎の話。二人で懐かしそうに話を進めているけど、私には内容が見えない。


「ああ、ごめんね。俺たちが従兄弟だとは前に話したよね? 俺たちがよく行っていた家は晴生の父親の実家なんだ。晴生のおじいさんとおばあさんは血の繋がりのない俺にも優しくしてくれた本当にいい人たちでね」


部長が今住んでいるところは元々部長の父親の実家で、そこに住んでいたおじいさんとおばあさんが亡くなって、誰も住まなくなったから部長が住むようにしたという。


「神原さん、近くに住んでいるなら遊びに行ったらいいよ」

「えっ?」

「晴生はこう見えても昔から寂しがりやだからね。な、一人は寂しいだろ?」
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