冷血部長のとろ甘な愛情
返答に困ってしまい、はぐらかすことしか出来ない。だいたい今はそんな話をする時間ではない。業務時間であって、文具フェアの様子を見に来たはずだ。

こんなところで口説かれている暇はない。

ほら、仕事よ、仕事!

流されそうになっていた自分にも心の中で戒める。

部長の肩を軽く押して、キリッとした顔で見上げる。まだ頬の赤みが残っているが、気持ちを落ち着かせるためか彼はふぅと息を吐き出して、壁に置いていた手を離した。


「そうだな、ここでする話ではなかった。悪い」

「いえ。気にしていませんから」


本当はものすごく気にしている。だけど、動揺を悟られたくはない。平常心を装って、入り損ねていた部屋に今度こそ入る。

聞いていた情報通り、斬新なアイデアの作品がたくさん並べられていた。機能性にこだわったものもあれば、デザインにこだわったものもある。


「わっ、かわいい」


部屋のインテリアにもなりそうな木で作られたテープカッターを手に取る。丸いフォルムがかわいく、側面には花が彫られている。
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