親愛なる君は、私の親友である

田舎娘と、野球男児

はじまりは、小学校だった。
私の住む地域は、信号機もコンビニもない田舎町。そのなかでも山奥にある、小さな集落だ。私がこの鮮明にみえる美しい星夜が都会では見られないという事実を知ったのはほんの最近のことであって、そのくらい、自然豊かで平和な場所なのである。
それ程の田舎町なのだから、もちろん子供の数なんて頑張れば数えられる程しかいない。

小学校の入学式。クラスメイトは私と、男の子がふたり。そのうちの一人、陽和は、私のご近所さんであった。通っていた保育園が別であったために、ほぼ会うことはこれまでなかったのだけれど、顔と名前は鮮明に分かっていた。陽和は幼くして見目の良い、野球男児であった。将来の夢はプロ野球選手だとか。昼休みは毎日、上級生の男の子達と野球。休日は地元の野球クラブで腕を磨く毎日をおくっていた。そんな子だけれども、性格は至って柔和で温厚であるために、既に広い範囲の人気者だったのだ。私は引っ込み思案で大人しすぎるような奴だったので、野球をしている陽和を見ているだけだったんだけど、放課後はよく彼の自宅に遊びに行った。笑いのツボがほぼ同じでゲラの私達は、『100万回生きたねこ』一冊で抱腹絶倒するほどだった。正直私もなんで笑っていたのか分からない。泣くとこだろそれ。
もう一人のクラスメイトは、雅紀。私は彼の存在を入学してから初めて知ったのだけど、この子は私とかなり気の合う奴だった。昼休み、グラウンドで野球に勤しむ陽和と横目に、二人で生き物をさがしたり、どんな動物が好きかとか、そんな話を良くした。こいつは男子というよりも女子に近い性格をしていて、女児アニメのごっこ遊びも二人でよくやったものだ。なんて懐かしい。ごっこ遊びの範疇でキスもした。物理的にいけば私の異性とのファーストキスは雅紀が相手ということになるが、恋愛感情なんて抜きのキスはノーカンだろう。確かそのごっこ遊び、設定としては2人ともプリキュアだったんだから。どちらかというと同性同士なのでは?とすら思える。
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