EGOIST
1 shot
昼の穏やかな光がステンドクラスを通り、静かな室内を色鮮やかに照らす。
左右にずらりと並べられた木製の長椅子。
その先にある祭壇には十字架。
窓の外からは子供達のはしゃぐ声が聞こえる。
そんな室内に人の姿は1つだけ。

白いブラウスに黒いベスト。
膝丈の黒とスカイブルーの二段フリルのスカート。
黒みがかった茶色の髪は一見して短髪に見えるが、よく見れば長い髪を短髪に見えるようにまとめている。
歳はまだ10代ほどのようで、まだ幼さの残る面立ちをしている。

少女は祈りを捧げるではなく、椅子に座ってただ目を閉じている。
かと言って寝ているわけでもなく、意識はしっかりとあり、空気の流れや音をしっかりと感じ取っている。

と、ゆっくりと瞼を開く。
そして立ち上がったのと扉が開いたのはほぼ同時だった。

入ってきたのは1人のカソックに身を包みサングラスをかけた男。
杖をつきながらゆっくりと建物に入ってくる。
サングラスをかけているためその向こうにある目を見ることはかなわないが、その目は少女のほうを正しく見ていない。
いや、彼には自身の周りにある物すべてが見えていない。

< 11 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop