EGOIST
「やぁ、待たせてすまないね、エレン」
「いえ、お気になさらず」

男の言葉に、少女―――エレン・フェアファクスはゆるゆると首を振った。

「それで、コンスタント神父。ご用件は?」
「うん、少し頼まれてほしい仕事があってね。実は昨日、2人のアルマの子供を女性が保護してほしいと連れてきたんだ」

コンスタントの言葉に、エレンはわずかに眉間に皺を寄せた。

アルマとは、「デリット」と呼ばれる薬により身体能力を強化された人間とその子孫の総称だ。
かつて彼らは犯罪組織間での抗争、反政府組織殲滅のための兵士に投与されていた。
さらに公にはなっていないが、身体強化兵士として海外に輸出されていたという過去もある。

その存在は国が国であるための戦力として認知される一方で、常人を凌駕する力を持った化け物として長らく迫害されてきた。
今は表向きには法によって彼らの人権は守られているが、根強い差別は完全にはなくなっておらず、彼らを狙った殺人事件や自身のおかれた環境に不満を持ったアルマにより暴力事件も少なからず発生している。

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