EGOIST
パチリ、と音がしそうな勢いで目を開けた。
視界に入ったのは暗い見覚えのない部屋。
それがあるホテルの一室であることを思い出してようやくここが現実で、先ほどまで目にしていたものは夢であることを認識した。

それにダンテは大きく息を吐き出し、額に浮いた汗を拭う。

「なんてモン見るんだ」

なんて、1人悪態づいた。

と、その時隣でもぞりと動くものがあった。

「ん………どうしたの?」

布団の中から顔を出したのは裸の女。
数か月前に知り合ったセックスフレンド。

「いや、なんでもねぇですよ」

その女に、ダンテはヘラリ、と笑って見せた。
すると女は「そう」と言ってすぐに寝息を立て始めた。

それを確認し、ダンテは天井を仰いだ。

いやな夢を見た。
忘れようにも忘れられない、過去の記憶のリプレイ。
こういう時は目を閉じるだけでそれが再開してしまう。
これはもう眠ることを諦めるしかないと、ダンテは溜息をついた。

ふと、視線を動かすとサイドボードに置いたスマートフォンが目に入る。
理由もなく、エレンに連絡したくなってそれに手を伸ばしかけて、やめた。

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