EGOIST

2

「、」

エレンが目を開けると、そこは冷たい壁の牢。

記憶ははっきりしている。
マーシャ・スキナーと別れ、大通りを歩いているところで2人組に拉致されたのだ。
細い路地に誘導されたところで強い衝撃を加えられ、そこで記憶が完全に途切れているところからして、気絶させられ、ここまで運ばれただろうことが予想できる。

腕には手枷がつけられており、自由が利かない。
足は自由であるが、そもそも牢に閉じ込められている時点で彼女に自由はない。

「お目覚めのようだね」

男の声が聞こえた。

エレンがそちらに視線を向ける。
そこに立っているのは白髪交じりの髪の男。
男にしては細い体躯を白衣で包んだその男は、薄気味悪い笑みを浮かべてエレンを見下ろしていた。

「お久しぶりですね、フィランダー・レドモンド博士。7年ぶり、でしょうか」
「おや、覚えていてくれたのかい?あの頃君はまだ8歳ほどだったはずだが」
「記憶力はいい方なので」

そう静かに語るエレンは、声音とは裏腹に、警戒の目を男に向けていた。

「そんなに警戒せずとも構わないよ。まだ何もするつもりはないからね。君はまだ、私の大切な客人だ」
「客という割に、扱いは雑ですが」
「それは許してほしい。何せ相手は君だ。悠長なことをしているとこちらの身が危ない」

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