EGOIST

4

ドサリ、と音を立てて獣が倒れた。
犬に似たそれは、しかし犬というのは巨大だ。

獣は他にも何体かいるが、そのどれもがもう動くことをやめていた。

それらから流れ出た血液は、まるで湖か何かの様に床を満たしている。
そんな様子を、少年はただぼんやりと見つめていた。

ダンテ・バスカヴィルは、心臓に問題を抱えた状態で生を受けた。
投薬治療などで命を長らえさせることは可能だが、15歳までは生きられず、それ以上生きるためには心臓移植しかないと言われていた。
彼の父は移植する心臓を探してこそいたものの、消極的だった。
その理由を本人に尋ねたことはないが、おそらく、ダンテが所謂不義の子であるというのが関係しているのだろう、とダンテは思っていた。

< 149 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop