EGOIST

1

「なぁ、エレン」
「くどいですよ、イアン」

何かを言おうとしたイアンの言葉を、資料に目を落としたエレンはぴしゃりと遮った。

「まだ何も言ってないじゃん」
「どうせダンテに連絡しろとかそういうことでしょう」

ぶーぶーと文句を言うイアンであるが、エレンは聞く耳を持たない。

エレンは最近ダンテに連絡をしていない。
仕事が全くないわけではない。
今も先日警察からの捜査協力のための情報収集を行っている最中だ。
いつもならばダンテに連絡して何らかの手伝いをしてもらっているところなのだが、エレンは全くしようとしない。
その代り、ヒューにエルドレッドの部下を1人借りている。

名はラッセル・アビントン。
まだ若く、踏んだ場数はエルドレッドはもちろん、エレンより少ない。
しかし、将来有望とヒューやエルドレッドが思っている人物だ。
その評価は間違ってはいないようで、エレンが出した指示にしっかり答えてくれている。

「ラッセルさんがしっかりサポートしてくれているんです。ダンテを呼ぶ必要性はないでしょう」
「けど、「言われた範囲」だけだろ」

エレンはちらり、とイアンのほうに視線を向けた。
そこには不満を隠そうとしないイアンの顔があった。

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