EGOIST
ラッセルは確かにしっかりと自分の仕事をこなしてくれている。
だが、イアンの言う通り、指示されたことしかやらないのだ。
ダンテであれば、指示されたこと以外にもこれも必要であろうと先読みして指示した以上のことをやるのだ。

「最初からダンテと同じだけのことをやれというのは無理というものでしょう。ラッセルさんとダンテでは、付き合いの長さが違いすぎる」
「まぁ、そうなんだけどさぁ」

イアンの気持ちが分からないわけではない。
エレンも少し前まで似たようなことを思っていた。
だが、そこには付き合いの長さや性格などの違いがあるのだから仕方がないことだと早々に受け入れてもいた。

「けどさ、エレン。お前、ラッセルのことは信用してても信頼はしてないだろ。それ以前に、じーさんの下にいる奴らはエルドレッドを含めて信用しても信頼してない」
「………」

イアンの言葉に、エレンは何も言い返さない。

信用と信頼とは似ているようだがイコールではない。
信用は過去の実績に対する評価。
信頼は過去の実績をもとにして相手に対して寄せる未来への期待。
信頼するには信用することが絶対条件だが、信用しているからと言って必ず信頼に結びつくかと言えばそうではない。
信用が信頼へと繋がる過程には感情という揺らぎが存在するからだ。
それはエレンとて例外ではない。

< 194 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop