EGOIST
「つうわけで、俺の気持ちは変わらない。さっさと履いちまった方が楽だぞ」

どうだと、得意げな笑みを浮かべるダンテに、エレンは言葉を失う。
何か言おうとして口を開くが、言葉を発することなく閉じられる。
その後、観念したように息をついた。

「…………私も、貴方が好きです。できることなら、貴方には傍にいてほしい」
「喜んで」

そう言い、ダンテは掴んだままだったエレンの手を引き、抱き寄せた。
抵抗なくダンテの腕の中に納まったエレンの顔は見えないが、髪から覗く耳が赤い。

「なんだか、凄く負けた気分です」

子供っぽい不貞腐れたような声が聞こえてきた。
それに、ダンテはくつくつと笑う。
同時に愛しさがこみ上げてきた。
どうやら思っていた以上に自分はこの少女が好きだったらしい、とどこか他人事のように思う。

「なんだ、嫌なのか」
「そういうことではないですが………」

ぶつぶつとエレンが何かを言っているが、後半は全く聞き取れない。
こんなところで負けず嫌いを発動しなくてもいいだろうにとダンテは苦笑した。

「あ、近いうちにペルルにケーキ買いに行くのに付き合ってくれ」
「構いませんが、何故です」

ようやっと顔を上げたエレンがこてん、と首を傾げた。

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