EGOIST
日が暮れ、街灯がともりだした大通りから遠く離れたさびれた通り。
そこには光源はほとんどなく、あって精々切れかけの街灯程度。
人の通りもなく、聞こえてくるのはジジジ、と切れかけの街灯が切れまいと踏ん張る音と、近くを流れる生活排水や工業排水の流れる川の音くらい。

そんな中、異質な音が響く。
それは何かを殴る音。
そして、何かを追い詰める怒鳴り声。

音の根源は若い3人の男に、ボロボロになった男。
ボロボロの男の首で彼の血が付いたドックタグ。
ボロボロの男はおびえ切った眼で若い男達を見上げた。

助けてくれ、そう男は叫ぶけれど、3人は聞く耳を持たない。
煩いと、黙れと持っていたバッドでアスファルトを叩いた。
それにまた男はおびえ、体を縮ませ、3人はそれを嘲笑った。

周りは化け物だというが、どこが化け物だというのか。
人間である自分達のほうが強いではないか。

自分達のやっていることは正義だ。
自分達は正しい。
自分達はヒーローだ。

あぁ、ヒーローならば化け物を倒さなければ。
そうでなければヒーローではない。

バッドをゆっくりと振り上げる。
そして振り下ろそうと力を入れた時だった。

カシャリ、と。
それまでしなかった異質な音と一瞬の眩い光。

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