EGOIST
それに4対の目が音のした方に視線を向けた。
そこには小柄な誰かが立っていた。
切れかけの街灯が照らしたのは、まだ成人していない少女。
その手には4人に向けられて構えられたスマートフォン。
どうやら、あの少女がカメラアプリか何かでシャッターを切ったらしい。

4人はあっけにとられたが、最初に我に返ったのはボロボロになった男のほう。
男は前のめりになりながらも逃げだした。

それに気づいた3人が男を追いかけようとしたが、その時もう一度シャッター音。
それに3人の意識は完全に男から少女へと向くことになる。

「やりましたね、お兄さん。明日の朝刊の一面を飾れるかもしれませんよ。見出しは、そうですね………歪んだ欲望をむき出しにした勘違いヒーロー、でしょうか」

そう言い、少女は笑った。
その言葉が、笑みが、3人の神経を逆なでする。

歪んだ欲望?
勘違いヒーロー?
違う、違う、違う。
自分達はそんなものではない。
自分達はヒーローだ。
自分達は英雄だ。
自分達こそ正義だ。
そんな自分達が犯罪者であるはずなど―――。

「それを勘違いだというんです。その行いが正義か悪かなんて、後からその他大勢が決める事。その行いの根底にある物は、正義でも悪でもない。その他大勢の審査で正義だと認められたその時、その人は初めてヒーローになれるんですよ、お兄さん」

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