EGOIST

3

放心状態の男達が、かけつけた警察によってパトカーに押し込められていく様子を、エレンは離れた場所から眺めていた。
あの状態では保身のための嘘もままならまい。
父親のほうも、フェアファクスが出てきたと知ればおいそれと揉み消しには走れないだろう。

すでにヒューへは報告をしてある。
そしてついさっき、直接報告に来るのは明日で構わない、という返信があった。
なので、本日の仕事はこれで終わりである。

「それで、何故貴方がここにいるんですか」

視線は警察車両に向けたまま、声は背後に向けられ発せられた。

「聞かなくても分かるでしょ。お前の居場所知ってるヤツくらい」

言いながら近づいてきたのはダンテだった。

「イアンですか………」

溜息交じりに言えば「せーかい」という軽い調子の声が聞こえてくる。

ダンテの言う通り、聞くまでもなく選択肢は最初から1つしかなかった。
もとよりエレンがここにいることを知っているのはヒューとイアンくらいのもの。
さらに、ダンテにその居場所を教えるのはどちらかと言われれば、それは間違いなく後者だ。
そう分かっていながらあえて問いかけたのは、極稀にではあるが前者が彼に連絡をよこすことがあるからだ。

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