溺愛は突然に…
…とりあえず、今後の予定を書いて、彰人に渡した楓は、言われた仕事をこなしていく。

「…わぁ、上手にまとめるんだねー」
「…え?ぎゃ!」

突然後ろから声をかけられ、振り返った楓は悲鳴をあげる。

仕方ない。自分の顔の数センチ前に、知らない男の顔があるんだから。

「…ごめん、ごめん驚かせたね。で、君誰?」
「…え、あ、西村楓と言います。今日からアルバイトで入りました。宜しくお願いします」

立ち上がるなり深々と頭を下げて、そう言った楓は再び頭を上げると、数人の社員がなかに入ってきていた。

『楓ちゃん宜しくー。西村さん、宜しく』

口々に言われた楓は何度か頭を下げた。

「…いいから仕事して。それ、急ぎだから」

無表情に彰人に言われた楓は、慌てて座ってパソコンを打ち始めた。

「…彰人、楓ちゃん苛めるなよ」
「…そうそう、彰人がそんなだから、バイトの子、直ぐに辞めちゃうんだぞ」

…誰にでもこんな感じなのか、と、楓はげんなりしつつも、他の人たちは優しそうなので、なんとかなりそうだと、心を奮い立たせた。

…ふと、もう一度、オフィス内を見渡す楓。

デザイン会社なのに、女子社員が一人もいない。

「…彰人さん」
「…何?なんかわからない?」

パッと楓を見た彰人が言う。

「…ここって、女子社員は?」
「…強いて言うなら、楓だけ…」

「…?!」
「…くだらないこと考えてないで、さっさと仕事して」

「…は、はい」

…早まったな、このバイト。

楓は紅一点で、バイトをする羽目になってしまった。

男慣れしてない楓には、拷問かもしれない。
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