溺愛は突然に…
「…率直で素直な感想が聞けて嬉しいです」
「…え」

思ってもいない女将の言葉に、楓はポカンとする。

「…老舗の料亭になると、なかなかそんな意見が聞けないんです。良いところも、ちょっと手直しした方がいいところもわかりました。板前と話して、もう一度出来上がったものをお願いします」

そう言って女将は深々と頭を下げた。

「…ぇ、あの、私なんかの意見で、直す必要なんて」

困ったように呟き、楓は陽翔を見た。

陽翔は何を言うでもなく、ただ、楓に笑顔を向けるだけ。でも、その笑顔は、大丈夫、そう言ってるように見えた。

「…それでは、社の者とも話を詰めていきますので、料理が決まりましたら、また、ご連絡下さい」

「…はい」

店の外でそんな会話をし、楓と陽翔は車に乗ると、車は静かに発車した。

「…楓ちゃん、今日はありがとう」

突然礼を言われた楓は慌てて首を降る。

「…そんな、お礼なんて言われることはなにもしてません。むしろ、足を引っ張ってしまったんじゃないかって、思ったくらいで」

楓の言葉に、陽翔はクスッ笑う。

「…お前って、可愛すぎ」
「…?!」

「…可愛すぎて、食べちゃいたいくらいだ」
「…む、無理です‼」

車の端に追い込まれた楓はあたふたする。

陽翔はそれを楽しむかのように、楓の頬にソッと触れた。

「…しゃ、社長…」

微かに震えた楓の声に、ちょっと苛めすぎたかと、陽翔は楓から、離れた。

そして、再び楓の顔を見つめ、ニコッと笑顔を浮かべた。

「…楓ちゃんは、俺の専属にするから」
「…他の女の人たちと一緒の扱いは止めてください」

楓の言葉に、陽翔は目を見開いた。
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