溺愛は突然に…
…着いた所は有名な料亭。

通されたのは、一番奥の箱庭が見える静かな座敷。

交渉相手は、その料亭の広報役と、女将だった。

こんなかしこまった料亭の料理を食べれるのは嬉しいが、仕事が絡んでいるため、楓は動きをギクシャクさせた。

陽翔はそれに気づいたが、言葉をかけるのを控えた。反って緊張が増したらいけないとふんで。

…簡単な挨拶を交わしてすぐ、おもてなしの料理が運ばれてきた。

見たことのない料理の数々。綺麗な飾り切り。楓は一瞬で、その料理に見とれてしまった。

目をキラキラと輝かせる楓を見て、陽翔はクスッと笑った。

「…どうぞ、食べてください」
「…ぁ、はい、頂きます」

女将に促されて、楓はそう言うと、しっかり手を合わせて頂きますと呟き、一口料理を食べた。

「…んー、美味しいー」

思わず本音が口をつく。

楓の言葉に、その場が和んだことなど、楓自身は気づいていない。

「…社長、こちらの料理を推していきたいので、パンフレットに入れていただきたいのですが」

広報役の言葉に、頷いた陽翔は、楓に声をかける。

「…西村さん、この料理のいいところは?」
「…え?そうですねー。これは…」


思ったことを素直に分かりやすく言う楓に、陽翔は感心した。

「…こちらは、西城社長の秘書の方ですか?」

女将の言葉に、頷いた陽翔。

楓は不味いことを言ったかと思って、肩をすぼませた。

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