マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「そんな人いねーよ。さっきエレベーターの前で別れたきりだし」


平然と嘘を吐くリーダー格の男。
私は口を塞がれたまま、体をもがいて訴えていた。


(私はここに居ます!お願い!誰か知らないけど助けに来て!!)


「んんーっ!!んーっ!!」


もがけばもがく程、力強く押さえられる。
口だけじゃなく鼻まで隠されてしまい、呼吸が出来なくなってしまった。


(くっ…苦しっ……)


力を入れたいのに入らない。
クラリ…と酸欠のように意識が薄れ、目の前がぐるぐると回り始める。


「いい加減な嘘を吐くな!お前達が女を運び入れるのを見ていた人間がいるんだ!彼女をさっさと解放しろっ!でないと警察沙汰にするぞっ!」


遠退く意識の中で気づいた。


(今の声……社長……?)


ガチャン!とロック解除の音が聞こえたまでは覚えている。

けれど、その後は闇に包まれてしまったーーー。



< 37 / 173 >

この作品をシェア

pagetop