好きですか? いいえ・・・。





「いつから? 最近?」



私は知っている。



「修学旅行の新幹線でさー、顔色悪そうな男子に会わなかった?」



「あー、会ったような気がする。まさか、それが落合くんだったの?」



「まあ、そんなところ。」



私はもちろん知っている。



「その時、財満さんに3つの秘伝薬をもらったんだよ。1つ目は、体調が良くなりますようにっておまじない。2つ目は、修学旅行楽しめますようにっておまじない。そして、3つ目が……。」



「……落合くんも周りの人も幸せになれますようにっておまじない。」



「覚えてたんだ?」



私は口籠った。落合くんはこんなにも私に対して想ってくれている。そのことを私がお母さんと落合くんの会話によって知っていたことを落合くんに正直に打ち明けられない私はなんだろう。



ズルい女だ。でも、こんな女なのに、落合くんは想ってくれている。親切にしてくれている。そして、たった今、その親切の中に愛があって、私は愛されていたんだということに気づいた。



愛されることは嬉しい。それは誰だってそうだと思う。人は、愛がなきゃ生きていけない。人への愛だけじゃなくて、仕事や、友達や、動物や、食べ物、音楽なんかにも愛がないと生きていけない。



愛するということは生きていくこと。



私は歩けなくなったことによって、生きることを諦めていた。その諦めを落合くんが吹き飛ばしてくれたんだ。




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