好きですか? いいえ・・・。
みんなが車椅子の私と落合くんに注目した。さっきまで寝ていたであろう野球部の男子、スマホをいじってたであろう吹奏楽部の女子、本を読んでいたであろう演劇部の女子、年号を黒板に書いていた先生が一斉に。
その中に教室の窓側の後ろから2番目の席に座っている、私の大好きな人、川上昇くんの視線もあって、私は思わず俯いてしまった。
みんなが私に視線を向け、隣の人とヒソヒソ話をする中、日本史の先生は静かにチョークを置いた。
「遅いぞ、財満。さっさと席に着けー。」
私は日本史の先生のその反応に驚いて、思わず顔を上げ、落合くんの方を振り向いた。
「ほら、さっさと席に着かないと。」
落合くんはゆっくり車椅子を押していく。私の席を落合くんが知ってるはずがないのに、落合くんは迷わず車椅子を押した。教室に文字通りの「空席」が1席。私が事故前に使っていた席には、椅子がなかった。
「これは……。」
また思わずそう呟いてしまった。その呟きが隣の席のサッカー部の男子に聞こえたらしく、笑顔で言った。
「財満さんが車椅子になったから、いつ戻って来てもいいようにって椅子を片付けておいたんだよ。机の高さも実際の車椅子を持って来て、合わせたんだ。」