好きですか? いいえ・・・。





私は周りを見回した。冷たく突き刺さるように感じていた視線が、柔和に見えた。いや、柔和だったのだ、初めから。私の先入観で冷たく突き刺さるように見えただけだったのだ。



私は嬉しくて、申し訳なくて、なんでこんなことで悩んでいたのかバカらしくて、クラスメイトを信じることができないことに情けなくなって、泣けてきた。前の席の女の子が私にハンドタオルを差し出してきた。それを受け取って、私はワンワン泣いた。落合くんを含めた、周りからどっと笑いが起こった。



「せーの……。」バレー部の女の子の掛け声に続いて、



「お帰り! 十志子!」



クラスメイト全員の温かい声が私に掛けられた。その大きな響きに、私はまた一層ワンワン泣いた。落合くんをチラッと見ると、落合くんも泣いているようだった。



「……ざ、財満十志子。ただいま帰りました!」



一斉に拍手が沸き起こった。隣の先生が何事かと私の教室を覗いてきた。落合くんの担任の先生だった。先生は落合くんを見つけると、



「こらー! 落合! 教室戻れ!」



首根っこを掴まれて、落合くんは私の教室を出て行った。その顔は泣き笑いしていて、私も泣き笑いで返した。



「落合くん、ありがとう! 本当に……本当にありがとう!」



落合くんがピースサインを送ってきた。




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