心で叫ぶ、君のこと
FUTURE
ジリリリリリ…




ジリリリリリ…



ジリリ……リリ……リリ……リ……。









…うおおおあうっ!意識遠のけてる場合じゃない!



ほら、起き上がりなさい!




ペチッペチッ。




容赦なくほっぺをビンタしまくったら目が冴えわたってきた。


いや、めっちゃ痛いけどね。




すぅーー、




「おっはよーーーーーぅ!」



はい、喉の奥底まで目覚めました。




これ、毎朝のルーティーンってやつ。



これしないと目が覚めなすぎて軽く5度寝しちゃうから。




え?朝っぱらから絶叫して近所迷惑?



全然全然、ノー問題。




家族はこんなん日課だからあたしの大声なんぞ気にもとめないし、近所っていったって家の周り1軒しかないし。





その1軒っていうのも、空き家なわけなの。




ってちょっと待った、こんなことしてる時間などあたしには残されていないのだ!



着替え着替え着替え!


顔顔顔!


髪の毛髪の毛髪の毛!


食パン食パン食パン!


歯磨き歯磨き歯磨き!


課題……



はもういっか。




鏡の前で乱れチェックして、

完了ーー!





あっ、待って!





ドタバタと、ベランダに駆け込む。




じょうろに水をくんで、たった一つの植木鉢に注ぐ。




なんで一つしかないかって、それは分かんないんだけど、なんか気づいたらこれだけあったんだよねぇ。







スターチス?


って言うらしい。




調べたらね、花言葉があったんだけど、



『記憶』

『永遠に変わらない心』

『途絶えぬ記憶』



なんだって。



なんかかっこいいよね?






…ふんふふん、大きくなーれ!






よっしゃあ、完了!



いや、一応いつも通り急いでみたけどちょっと今日余裕すぎない?
だってたぶんまだ7時すぎくらい…








!?!?!?






え、なに、何が起こった?!


見間違い?



短い針、8指してない?



そんでもって長い針、3指してない?






え、つまり、8時15分なうってこと?






、、
、、、。





「ギャーーーーーーーッ!!!」




ただいま、脳内BGMがミッション・インポッシブルのあのお馴染みのメロディーに切り替わりました!





ミッション・インポッシブルの意味はわかんないけど、たぶんあたしの今の気持ちそのままの意味なはず!




『とにかくやばい。』






遅刻ちこくチコク!!




ぜっったいあたし目覚まし1時間遅くかけたんだ。


やってしまったっ!


ただいまの時刻が発覚してからここまでの時間、10秒。




華麗なるフォームで部屋を飛び出し、


全力疾走で玄関をぶち破り
(あたしのせっぱつまった脳みそがそう思い込んだ。)、

無我夢中で手足を振りまくり、気づいたら校門の下に。




時計見てる暇すらない!

とにかく急げ!




閉まりかかったドアをこじ開け、

研ぎ澄まされた無駄のない動作で靴を脱ぎ、

履き、


ラストスパートをかけまくって廊下を突進していく。





来たァー1の3!!



ガラガラッ。

キーンコーンカーンコーン。




「おおおおおー!」
突然飛び込んだあたしにビックリしてたクラスメイト一同、拍手喝采。




いよっしゃああああ間に合ったああああ!




しかも教室入った瞬間チャイムが鳴るっていう奇跡。




「おはよ。すごすぎ。」


「萌黄最強説、更新されたわ。」


「今日も間に合ってよかったね。」



みんなあたしの肩をぽんぽん叩きながら口々に感想を述べてく。




「いやぁ、これもまあ、才能ってやつですかね?もっと褒めて褒めて。」




ピシッ。

「痛っ。」



振り向くと、




「萌黄!間に合ったんね。」




「おー佐奈、おはよっ。そーそー、なんとかね。萌黄の奇跡とおび!」




「なにそれ〜だっさー。」





「ださくないわ!歴史的な大事件でしょーが!」



「毎日毎日ギリギリできて偉そうな事言ってんじゃないわよ。」



「いいのいいの、これがあたしのやり方だから。」



「かっこつけちゃっててぇ〜。」




「…あのお2人さん?」




「なに海央ちょっと待って、今佐奈にあたしの素晴らしさを教えてあげなきゃいけない。」





「…真野。」




ぎくっ。





この凄みの効いた低音ボイスは…!





恐る恐る振り返るとそこには我らがグレートティーチャーが…。



「お前、チャイムがとっくに鳴ったことはわかってるか?」




「あ、は、はい…あのぉ…、すんません。」




「お前はなぁ!なんでいつもいつも時間にだらしがないんだ!しっかりしろ!」




ひいいいいご勘弁をおお〜!





てか佐奈は?なんであたしだけ?






…いや、おい。



なに当然みたいな顔して席座ってんの、、いつの間に。




先生が来るの見た瞬間逃げたなこの。



ありえないわー。




みんながくすくす笑うなか、しらばっくれてる佐奈を一睨みしてから席につく。





「…おつー、萌黄。」



斜め後ろから話しかけてくる梨香子。




「ったく佐奈のやつめ。ありえないんだけど。」



「佐奈の逃げ足が異常なのはいつものことでしょ。だからまあ彼氏と別れんのも一瞬だけど。」



「ぷっ、確かに。佐奈の彼氏は毎日変わるレベルだもんね。」



「はは、さすがに言いすぎでしょ。
萌黄は?いい人いないの?」



その言葉に、思わず教室を見渡す。



「えー…あたしぃ?」



お調子者のうるさい奴ら、恐怖のレディーファーストマン楓くん、それから、謎に空いてるあたしの斜め前の席。




「…いないんだよなぁ…。」



なんかほんとに、ピンとくる人がいない。




「えーそうなの?萌黄ってなんか一途って感じするわぁ。」



「一途?いやいや、相手いないからあたし!」



ははっと笑ってぶんぶん手を振る。



「そぉ?」



そのとき、ホームルーム終了のチャイムが鳴った。



「あ、萌黄、屋上の前のとこ行かない?あそこなんか涼しいしめっちゃいいのよ、海央が見つけた。」



もうさっきの話は忘れたのか、梨香子がそう誘ってくる。



「え?あ、うん。屋上の前?へぇー。」



そんな穴場があったのね。





よし、行こ行こ。







…えっ?





なんか今、右手になんかふわって触らなかった?




なんか柔らかくて、あったかい…。







「萌黄?」


梨香子、海央、佐奈が不思議そうにあたしを見てる。





「どしたのよぉ?」


「手がどうかした?」





…気のせいか。




「いや、なんもない!」





そう笑って、急いで3人に追いつく。









そのとき、




両目からぽろっと、



涙が落ちたことに、



あたしは気づかなかった。
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