心で叫ぶ、君のこと
それからもおかしいことは続いた。



一つ目。



なんかあたし、最近ずっと昴と帰ってない気がする。




いやね、下校のときは、普通に同じ方向の女子たちと帰ってることになんも違和感を感じてなかったんだけど、



それを翌朝思い出すと、あれおかしいなって思うの。





なんで昴と帰んなかったんだろって。




でも同じクラスだし自然な流れで一緒に帰ってたんだよ、今まで。




なんか昴、用事あったんだっけ?




やばいかなぁ、物忘れ激しい?







「ねえねえ、」




斜め後ろの梨夏子に聞いてみる。



「ん?」

梨夏子はつい声が大きくなったあたしを注意するように小声で答えた。




「あ、ごめんごめん。」




教室の前では先生が熱血指導中。


内容はよくわかんないけど、まあ社会の授業だしたぶんトヨトミさんとかじゃない?



「昨日さ一緒に帰ったでしょ?」

「うん、帰ったね。」

「あたしどんな流れで梨夏子と帰ったっけ?」

「どんな流れって、普通に萌黄がマック行こって言って、それでって感じだけど。」

「まじ?あたし言ったっけ?」

「言ったじゃん、大丈夫?」

「いや、うん。あのさ昴って何してたんだろ。」

「昴くん?あー、確かに。あれ、なんで私おかしいと思わなかったんだろ。萌黄いつも昴くんと帰ってるよね?」

「そーそー。だからさ、おかしいなって思ったんだよね。地味に記憶があいまいで。」

「あれ、待ってなんか私もよく思い出せない。」





梨夏子も顔しかめてる。




だよねぇ、やっぱり。




「あっ、昨日佐奈もいたと思う。」

「佐奈?…ああっ、いたいた!」

「私と萌黄と佐奈でマック行って、めちゃ愚痴ってなかった?先生のこととか。」

「そうかも!そうだそうだ、え、ていうかあたしと梨夏子と佐奈ってさ、中学の時たまに帰ってたよね?」




「あ、昴くんが休んだ時とか?」



「そうそう!」



「え、じゃあ昨日休んでたんじゃない?」



「昴が?」


「うん。」


「ええ、そーだったっけ?」




なんかそう言われればそんな気もしてくる。




昨日…。




朝…はまた寝坊したから一人でタイムアタックしてたし、


課題終わってなさすぎて朝来てからはずっと机でひーひー言ってたしなぁ。




たまに海央とかがからかいに来るくらいで昴は来なかったし、。




授業中は睡魔に敗北してたし、。





「じゃー休んでたかも。」




「でしょ?絶対そうだって。ほら一緒にいすぎてさ、休んでてもなんかいるみたいな気持ちになっちゃうんだよ。」



「んなわけないっしょ!もう、最後の
最後でいじってくるんかい。」



「…はいじゃあここ、松原。」




うわ、梨夏子当てられちゃったよ。
ごめんごめん、あたしのせいで答えられな…



「1592年です。」





わかるんかーい!




「正解だ。お前、喋ってると思ったら聞いてたんだな。まあ真野が聞いてないことは確かだが。」




「な、なんであたし!?」




「さっきからお前だけ声のボリュームが異常なんだよ。独り言に聞こえるぞ。」




うへぇ、恥ずかし。



「すいませーん、。」



「ドンマイドンマイ、声でかいよって言おうと思ったけど面白いからやめといた。大丈夫、昴くん爆睡だから。」




梨夏子の指さす先は、机に突っ伏して深い呼吸を繰り返してる昴が。




うっわぁ、昴がどうのこうのとか聞こえてなくてよかった。




「そりゃよかった。けどあたし恥ずかしいじゃん!」



「いつものこと。」




ぐっさぁ…。



なんかあたしの周りってみんなストレートすぎない?



昴に海央に梨夏子に先生に…!





…あ、やばいまた喋ってると先生に当てられるからおとなしくしとこ。

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