【仮面の騎士王】
***


 星の瞬き一つ見えぬ空の中に、墨を流し込んだような真っ黒い雲が流れている。雨だれが一粒零れ落ちたかと思うと、あっという間に滝のような雨が降り始めた。


 何も考えられず、ケイトリンは窓際の椅子に腰をかけて部屋の中から窓の外をぼんやりと眺めた。激しい雨音が、逆に部屋の中の静寂を浮きだたせているようだった。景色が歪んで見えるのが雨のせいなのか、それとも自分の涙のせいなのか、それすらもケイトリンにはよくわからない。ただ一つだけ確かなことは、心の中が空っぽになってしまったような気がするということだけだった。


 どれくらい時間が経ったのか。部屋には明かりが灯されていた。


 いつの間に侍女が来たのだろうか、とケイトリンが思った時、誰かに肩を叩かれた。振り向くとすぐ目の前に年かさの侍女がいて、ケイトリンは飛び上がりそうなほど驚いた。


「あの、申し訳ございません。驚かせるつもりはなかったのですが、明かりをお持ちしたので
す。何度お声をかけても返事がなかったので」


 すらりとした、というよりは骨ばった体格の侍女は、困ったような顔をして、距離をとった。


「ごめんなさい。ちょっと考え事をしていたので」


 ケイトリンの返事をよく聞きもせず、侍女は落ち着かない様子できょろきょろとあたりを見渡す。誰もいないことを確認すると、再びケイトリンに近づいた。先ほどよりもずっと近い距離に。



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