【仮面の騎士王】
「そうだと良いのですが」


(私、ファビアン様の立派な花嫁になれるのかしら)


 ロッソは、ケイトリンを一つ年上のファビアンに嫁がせるために、余計な虫がつかないよう、あまり人前に出していなかった。


 そのため、ケイトリンが何者か知っている者が少なく、突如ファビアンとともに現れた謎の美少女の正体を知ろうと、あちこちがざわつき始めた。


 人々の好奇な目にさらされ、ケイトリンは委縮した。


 宮廷舞踏会のデビューに婚約発表だと、屋敷の侍女たちが、お祝いの言葉を口にしながら興奮して自分を送り出してくれたものの、この舞踏会の騒がしい雰囲気を、ケイトリンはあまり好きになれそうもなかった。


 そんな憂鬱な気分を吹き飛ばすように、突然、コルネットの音が大広間に響きわたった。人々が恭しく頭を下げる。


 ファビアンに倣い、ケイトリンも両手を胸の前で組み、その場で頭を下げる。


 大広間よりも数段高い位置に設けられたバルコニーへゆっくりと姿を現したのは、国王であるアルフォンスだ。


 金色のジレの上に上品なボルドーのジュストコートを羽織っていたが、下腹の膨らみのせいで、せっかくの豪華な衣装は窮屈そうに見えた。丸みのある顎に生えたひげ面は、一見すると人の良さそうな人物といった雰囲気を醸し出していたが、そのするどい眼光は、一部で冷酷王と渾名されるのがしっくりする。


 その後に赤いドレスの女性が続いてあらわれ、アルフォンスが腰を下ろすと同時に音楽がぴたりと鳴りやんだ。


 それを合図に、人々が顔を上げる。アルフォンスは、息子と隣に並ぶケイトリンの姿を確認し、満足げに頷いた。


「今宵は我がミルド国の王太子ファビアンの妃となる令嬢を皆に紹介しよう。ペンプルドン侯爵令嬢、ケイトリン!」


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