【仮面の騎士王】
 人々の視線が、一斉にケイトリンに注がれる。
 

 なるほど、あれが執政官長ロッソが手塩にかけて育てた娘だったのか、と誰もが納得した。


 ケイトリンの母であるシャンタルは、現王アルフォンスの妹であり、ミルドの蒼玉と称えられた美貌の持ち主であった。臣下の中で最も裕福で勢いのあったロッソに降嫁した後、火災に巻き込まれて亡くなっており、人々の記憶から薄れつつあった。


 しかし、今、ケイトリンの輝くような美しさを前にして、彼女の母親を知る者は在りし日のシャンタルの再来だと感じ、また、彼女の母親を知らない者は、シャンタルがいかに美しかったかを想像することができた。


 公の場にめったに姿を現さないケイトリンがミルドの蒼玉と評されるのは、彼女が母親に似て美しいという噂によるものだったが、人々は彼女の美しさが噂以上だと目を見張った。


 ケイトリンは、衆目の中、アルフォンスに向かい両手でドレスの裾をつまんで軽く持ち上げると、膝を曲げて深々と頭を下げた。


「ファビアンとケイトリンにより、我が王室、ひいてはこのミルド国がますます発展することを期待する!」


 アルフォンスは簡潔に言い終えると、楽隊に視線を送る。


 すぐに音楽が流れ始め「さぁ、ケイトリン。まずは僕たちからだ」と言うファビアンに手を引かれ、ケイトリンは彼と向かい合った。












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