【仮面の騎士王】
 どれくらい踊ったのか、気付けばケイトリンは、はぁはぁと息を切らしていた。


「あの、私、もう踊れません。足がついていきません」


「そのようだな」


 レイフは、肩で息をしながら屈託なく微笑むケイトリンを見て、わずかに唇の端を持ち上げた。


「で、どうだった?」


「え?」


「苦手は克服できたかな?」


「私、知りませんでした。踊りがこんなに楽しいなんて」


「そうか。それでは、ファビアンの妃としてもやっていけるだろう」


 レイフの言葉に、ケイトリンは、急に胸がずきんと痛んで息が止まったような気がした。


「そう、ですね」


 レイフの体が、ゆっくりと離れていく。最後につながっていた右手の甲に彼は頬を寄せて軽く口づけた。


「そろそろ、戻った方がいい。ファビアンが捜しているだろう。あなたは今日の主役なのだから」


「はい」


 はい、と答える以外にない。けれど、それとは反対にケイトリンの心はこの場を立ち去ることを拒否しているようだった。歩き始めたレイフのたくましい背中を見て、ケイトリンは目を閉じた。


「どうした? 大広間はこっちだ」


慌ててレイフの後を追いかけようとして、ケイトリンは足に力が入らず、よろめいた。


「きゃっ!」


「危ない!」


 レイフの動きは俊敏で、転びそうになるケイトリンに駆け寄り、全身で彼女を支える。倒れまいとしてケイトリンの両手が無意識にレイフの体をギュッと握りしめた。


 その瞬間「うっ!」と、うめき声が上がった。


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