政宗かぶれの正志くん
喉の調子がおかしい体を装い、咳払いを少し大袈裟にしてみる。


ちょっと首を傾げたりなんかもして。


落ち着いて。冷静に。


そう外見だけは装ってみるも、内心、心臓がバクバクいっている。


心臓、飛び出るかと思った。


むしろ、ちょっと出た。


絶対、出た。


でも、そんな動揺を見せるなんて女が廃る…気がする。


気持ちゆっくり振り返ると、薄々の予想通り例の美人。


…顔が近い。


毛穴がない陶器のような白肌が近いったらない。


下から見てもイケメンって、反則。


ボヤーッとそんなことを考えている私の耳に、


「見つけた。我の、めご」


歌っているかのように滑らかな、甘いテノールが響いた。


蕩けるような笑みを浮かべている。


彼の容姿から流れるに相応しいその声にうっかり聞き惚れてしまったけれど、はたと気づく。


ん?今、何て言った?


「愛しきめご。もう離れることはない。すぐに婚礼の準備を始めようぞ」


「…へ?」


「ふふ…間の抜けた顔も愛らしい」


手を口に添えてクスクス笑う美人は大変麗しいけれど、伴うセリフがどうにもおかしい。


…あれか?彼は俳優で次の舞台のセリフ練習中とか?


いやいや、何故にここで。


何故に私に。


一瞬浮かんだ『彼は俳優案』はすぐ却下して、現実的な答えを導き出す。


「すいませんが、人違いですよ?私はめごさんではありませんので」
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