政宗かぶれの正志くん
「おぅおぅ!綱木!愛を口説くのは俺の許可を取ってからにしてもらおうかっ!」


「店長。包丁は下ろしましょう。強盗にしか見えないから」


「俺が強盗なら、お前は結婚詐欺師だな!」


「いやいや。僕、結婚はするし。すぐ離婚届突きつけられるけど」


ゲラゲラ笑う2人は何故気が合うのか外見からはわからないけれど、随分仲が良い。


そもそも、常連客とは皆こんな感じの店長。


最初は、曲がりなりにもお客様なのにこんな接客でいいのだろうかと思った。


私のイメージとしての接客は決してこうではないから。


オバチャンも奥さんもこんな感じの口調だし、私語もあれば、公私混同もあり。


でも、少なくとも常連客は彼らを求めているのだとすぐに理解した。


誰も「失礼だ」と怒らないし、常連客が増える一方だったから。


「敬語なんてやめてしまえ!飯が不味くなるわ!」


「オバチャンと呼べ!若々しいだろ!オバチャンって」


「敬語なんていらねーよ!敬われるようなタチじゃねぇからさっ!」


彼らからそう言われたのはすぐだった。


「慣れない土地で1人頑張っていくのは疲れる。そんな人たちの故郷のような、家族のような、気楽な店でありたいんだ」


癒しに1番縁遠い顔のくせに、そんなことを真顔で言うから。


泣き笑いしてしまったことを覚えている。
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