先輩、一億円で私と付き合って下さい!
 昼食も家政婦の戸倉が昼にやってきて準備し、質のいいものが出された。
 出前を利用することもあったが、それは寿司であったり、うな重であったりと、豪勢だった。

 リクエストも聞かれたが、うどんやラーメンと言ったら却下された。
 食べ応えのあるものがいつも用意される。

 最後の日はハンバーグが出てきて、セイはノゾミと顔を合わせてニヤニヤしていていた。

 ユメにごちそうしてもらったときの話を思い出し、俺の好物だと知って、ノゾミがセイに吹き込んだのだろう。

 またそれも豪華に、高級牛肉の塊を目の前でひき肉にして作ったハンバーグだった。

 それなら、ステーキで食べた方がいいんじゃないかというくらい贅沢だ。
 やることなす事、大胆に、そして予算を気にせずなんでもやりたい放題にできるセイ。

 やはり最後になってそれは羨ましい事だと、どこかで結論つけていた。

 ずっと一緒に過ごしていると、セイは俺にすっかり慣れ、笑いも自然に出てくるようになっていた。

 俺と同等になりたいと思いながらも、無意識に俺に頼って甘えてくる。
 それは俺を認めたということなのだろう。

 親しくなればなるほど、俺自身、金のあるなしが良く見えて、セイの環境が羨ましく思えてくる。

 特に家に帰って一人で狭い台所兼ダイニングに居ると、それが浮き彫りに見えてくるから、家では溜息が増えた。

 でも、それはそれで割り切るようにした。
 責任を果たした後では、セイとも顔を合わす機会が減るし、目にしなければそれは忘れて行く。

 そして梅雨の季節が近づく頃、雨も多くなり、俺も中間テストの準備で人の事など構える余裕もなくなった。

 それはそれでやる事があり、余計な事を考えることもなく勉強だけに集中できる、いつもの日常ではあった。

 この時までは──
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