先輩、一億円で私と付き合って下さい!
「姉の方が騙されてただけなんです。付き合ってた人、結婚しているの隠してたから。しかも奥さん今妊娠しているし、早く気が付いてよかったくらいです」
「なんかすごいな。でもそんな事情よく知ってるな」

「えっ、そ、それはその、だって妹だから……」
「第三者の目からすれば、見えてくることも確かにある。それは別れて本当によかった。ああいうプライドの高そうな女性は、そういうずるがしこい男から騙されやすそうでもあるし、あっ、いや、別に悪口じゃないから」
 俺は慌てて訂正した。

「わかってます。姉は顔もスタイルもいいから、自分に自信を持ってます。でも内面はとてもデリケートで、傷つきやすいんです。でもそれをさらけ出すことができなくて、無理をしてつい虚勢を張ってしまう……」

 この時、俺は「ん?」と居心地が悪くなった。
 何かとダブって、聞いていると耳が痛い。

「でも私にはそれがわかる。私が心開けば姉もきっと心開いてくれるって思ったんです」
「いい妹だな」

「いいえ、決してそんなことはなかったです。姉にとったら、私はイライラの種で、私もどうしていいかわからなくて姉を結構恐れてました」
「その割には、自分から飛び込んでたぞ」

 この時、ノゾミは俺をじっと見ていた。

「私、とても辛くて悲しくてずっと落ち込んでたことがあったんです。その時、姉が相談に乗ってくれて、私を慰めてくれたんです。それで初めて姉の優しさに気が付きました。困った時にはちゃんと助けてくれる。それをきっかけに嫌われてた訳ではなかったんだって思いました。それで、もっと素直に姉に自分の気持ちをぶつけようって思ったんです」

「そっか。姉妹にも色々とあるんだな。そういえばもう一人、弟がいたな。あっちとは上手く行ってるみたいだけど」
「あっ、セイ君……」

「弟はシスコンで慕ってるみたいだし」
「ううん、セイ君も複雑な思いを抱いてます」

「そういえば、悩みがあるっていってたな」
「でも、セイ君もいい子なんです。もっと分かり合えたら、きっと心を開いてくれる」

 ノゾミはじっと俺を見ていた。
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