先輩、一億円で私と付き合って下さい!

 腕時計を見て、俺はセイに声を掛ける。
「よし、そこまで」

「えっ、まだ最後までやってないけど」
「とりあえずは時間内でどこまでやれるかも試してたんだ」

 全てを解くことができなかったので、少し不満がちにセイは俺に問題用紙を渡した。
 俺はそれをチェックする。

 正解にはムラがあり、一般的にできるようではあるが、上位には入り込めないものが見えた。
 セイは落ち着かず俺を見ている。

「高校はどこを目指してるんだ?」
「中高一貫校だから、そのまま上がれる」

「だったら、このレベルなら進級は確実だと思うけど」
「ううん、高校生になるのは問題なくても、それは一般コースしか選べなくて、都合が悪いんだ。特別進学コースに行くにはもっと上位を目指さないとダメなんだ」

「へぇ、上を目指してるって偉いじゃないか」
「偉くもなんともないよ。そうしないとダメだって、親が言うから仕方なくさ」

「親に言われるから上を目指す?」
「嶺にはわからないだろうけど、プレッシャーが半端ない。それが原因で両親は喧嘩したり、父にはがっかりされ、母には罵られ、俺はできそこない扱いだ」

「酷い親だな。ここで一人で暮らしたくもなるな」
 俺は同情するつもりだったが、セイにはそれが気に食わないのか、俺に鋭い目つきをぶつけてきた。
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