先輩、一億円で私と付き合って下さい!
 昼食が出来上がるまでは、静かに俺たちは過ごした。

 支度はそんなに時間はかからず、ただお吸い物をこしらえただけで、どこかから買ってきた松花堂弁当を俺たちの前に並べた。

「ぼっちゃんが、これをご用意するようにとおっしゃったので」

 言い訳するように説明するが、出された弁当はどこかの高級料亭で用意したものに見えた。

 色とりどりに盛られて、素材も吟味された立派なおかずは、正方形の弁当箱の十字に仕切られた中できれいに詰められていた。

 そこに温かいお吸い物が添えられると、レストランで出される懐石料理と変わらなく思えた。

「豪華だな」
 ついそんな言葉が漏れてしまう。

「教えてもらうんだから、これくらいはしないと」
 そういうところは変に義理堅い。

 ノゾミも弁当を前にして戸惑っていた。

「とにかくまだやる事は一杯あるんだから、早く食べよう」

 セイが手を合わせ「いただきます」と先に箸を取れば、俺たちも後に続いた。

 その弁当は、素直に美味いし、出来立ての温かいお吸い物も出汁が効いていてとても香り豊かで旨みを感じた。
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