夢の言葉と失われた追想【夢の言葉続編④】
【翌朝】

明け方。
父さんにもらった小説を抱き締めながら、寝室の扉横の床に座ってウトウトしていた俺の耳に、カチャッと静かに開く扉の音がした。

横を見上げると、ボヤける視界に映る父さんの姿。

待ちに待った瞬間。
父さんが寝室から出て来た。
一瞬で、目が冴えて笑顔になる。


……けど。


「とうさ……」

立ち上がって握ろうとした父さんの手は、俺が掴む前に離れて……。
父さんは俺には目もくれず、立ち止まらず、ただ真っ直ぐに玄関の扉に足を進めていた。

……。

予想外の出来事に呆然とした。
瞬きもせずに見つめる父さんの背中は、ゆっくり俺から遠ざかって行って……。

玄関の扉のノブに、父さんが手をかけた。

ズキッと胸が痛んで、信じられない現実に心が砕かれて……。
今にも溢れそうな涙を、俺は必死で堪えながら父さんに駆け寄って手を握った。
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